管理組合は会社組織を見習うべき

2005/08/11の「今日の話題」で管理組合を民主主義政治に例えて論じましたが、私はむしろ管理組合は会社組織に近いと思っています。区分所有者が株主で、管理組合理事が経営者という図式です。管理会社は実際の業務を行う従業員の位置付けになります。そして、株主総会と同様に区分所有者全員による管理組合総会が最高議決機関で、会社経営と同様に管理組合理事が管理組合運営に責任を持つことになります。異なるのは、会社組織は利益の追求が目的ですが、管理組合ではマンションの資産価値の維持と居住環境の向上が目的ということでしょうか。

経営者が無能では会社経営がうまく行かなりますから、経営者にはそれなりの資質を持った人材が任命されます。経営者を毎年輪番制や抽選で決めている会社など、聞いたことがありません。ところが、管理組合という会社組織は経営者の能力に無頓着で、輪番制や抽選で経営者を決めているというのはどういうわけでしょう。まったく能天気としか言いようがありません。

私は、もし区分所有者の中に有能な人材がいないのなら、経営者としては外部の有能な人材を迎え入れればいいと考えています。もし区分所有者から成る理事会を存続するのであれば、それは会社組織の取締役会のような位置付けにして、経営者にモノ言いをする役割を持たせればよいのです。この場合、会社組織と同様に監査役も必要になるかもしれませんが、監査役には会計や管理組合運営に関する専門知識が要求されます。これも内部に有能な人材がいなければ、外部の有能な人材を招聘するのが自然な形でしょう。

今のマンション標準管理規約は区分所有者の中から選ばれた役員が経営者となることを想定しているのに、残念ながら実際には内部には有能な人材がいないということが理想と現実のギャップになっています。もちろんそのようにして選ばれた役員が一所懸命勉強して有能な経営者になっていくこともありますが、その場合も結局のところ後継者の人材不足に悩む結果になります。後継者を内部で育てられないなら、外部の有能な人材を採用すればいいのです。

そもそも区分所有法は、管理組合の経営者として管理者を定めていますが、管理者は区分所有者でなければならないという決まりはありません。管理組合運営の主体は区分所有者にあることに異論はないでしょうが、これは何も経営を自分の手でやらなければいけないということではありません。多くの株主の目的が会社経営自体にあるのではなく、そこから生まれる利益を享受することであるように、多くの区分所有者の目的も管理組合運営自体にあるのではなく、それによって得られる資産価値の維持と居住環境の向上にあります。それなら、むしろ経営は外部の有能な人材に任せるべきなのではないでしょうか。そして区分所有者は「モノを言う株主」として経営に対して積極的に発言していけばいいのです。

それには、まずマンション標準管理規約として、従来の「単棟型」、「団地型」、「複合型」だけでなく、第4の型として例えば「管理者型」のようなものがあってもよいはずです。現在の標準管理規約はマンション管理のあるべき姿のひとつを示していますが、現実から乖離した「絵に描いたモチ」になっているのであれば意味がありません。もし国土交通省に作る気がないのであれば、マンション管理士会などが独自のモデル規約を作ってもいいでしょう。

マンション管理士制度が整った現在、私の考えてることも決して夢ではなくなったと思いますが、いかがでしょう。