夢で見たマンション管理

こんな夢を見た。どうやら10数年後の未来に来たようだ。

築年数のかなり経過した60戸程度のマンションだが、建物は新築時の美しさを保っている。きちんと計画修繕がなされてきたようだ。すでに各戸に光ファイバーが2本ずつ配線されていて、オンデマンドのビデオ配信など高速インターネットの利用を楽しんでいる。手すりや段差の解消といったバリアフリー対策も進んでおり、改良工事も計画的に行われてきたようだ。清掃も隅々まで行き届いていて、気持ちがいい。

住人の誰もが、見ず知らずの私に笑顔で「こんにちはー」と声をかけてくる。私もなんとなく幸せな気分になって、思わず笑顔で挨拶を返している。

少し離れた場所で清掃作業をしていた管理員が、笑顔で住人に声をかけている。住人も笑顔で管理員の労をねぎらっている。管理員のほうきを持つ手の動きはてきぱきとしていて、まるでディズニーランドのカストーディアル(清掃員)を見ているようだ。いかにも掃除が楽しそうで、こちらも一緒に掃除をしたくなる。

いったいこのマンションはどのような管理をしているのかと気になって、住人のひとりに聞いてみた。
—UnderThisSeparatorIsLatterHalf—
すると、あるマンション管理士が管理者となっているのだと言う。月額7万円の契約だそうだ。管理員や清掃業者などは、管理組合の直接契約だが、その管理者がすべての業務を取り仕切っているらしい。特に管理員は世間相場の2倍の給与で採用しているそうである。その給与もアンケート調査による住人の評価で決まるらしい。なるほど、管理員が笑顔でよく働くわけである。

管理組合理事は区分所有者による輪番制で、毎月定例理事会に出席して、管理者からの報告を受けながら管理組合運営上の重要な事項の決定を行っているそうである。理事会も見学させてもらったが、理事のみなさんも色々な質問を出しながら、なごやかな中にも活発な討議が行われている。理事には報酬として月額1万円を支払っているらしい。なんでも、理事に報酬を支払うことが、管理者業務受託の条件とのこと。どうやら輪番制の理事に責任感を持ってもらうのが目的らしい。また、新任理事には日当を支払って、新任役員向けセミナーの受講までさせているという徹底ぶりだ。

監事は住人が就任することもできるが、専門的な知識が要求されるため、このマンションでは管理組合が別にマンション管理士と直接契約を行っているそうだ。報酬は理事と同じく月額1万円とのこと。そもそもマンション管理士が管理者であるため、監事の仕事は限定的であり、この金額で業務委託が実現しているらしい。ちなみにこの監事も別の複数の管理組合の管理者を兼任しているとのこと。万一管理者に事故があった場合には、この監事が臨時に管理者業務を代行する契約になっているそうだ。

実際の管理者に会って話をした。彼は、区分所有者・居住者に対する「おもてなしの心」と、「夢と感動を与えるサービス」を常に心掛けているという。これは彼が持つ基本理念で、実際の現場の管理員や請負業者の作業員にまで徹底させている。彼は8件の管理組合の管理者を兼任しているそうだが、「管理員を信頼して現場作業を任せているので、まったく問題はない」とのこと。管理員への権限委譲が進んでおり、管理員も現場を任されていることでやる気が起きているらしい。管理者による管理員への教育が行き届いていて、互いの信頼関係が構築されているのだろう。ほとんどのトラブルは現場の管理員レベルで解決できているそうだ。

マンション内の良好なコミュニティー作りも積極的に取り組まれており、春の防災訓練と、秋の定期総会の後には住人による盛大な懇親会が開かれているそうだ。これらの懇親会費用を一般会計予算に計上することも、彼が管理者業務を受託する条件とのこと。住人も他の予定をなんとかやりくりして参加するらしく、懇親会の参加率は100%に近いらしい。

また、会計報告がすごい。通常の収支報告書と貸借対照表だけでなく、マンションの時価総額と標準賃貸料の推移が報告されていて、マンションの資産価値と快適な居住環境が維持されているかどうかが一目で分かるようになっている。ただしこれは、このマンション単独で実現したものではなくて、10数年前にスタートした「マンションみらいネット」によるマンションの格付けと、中古マンションの販売価格や賃貸料が誰でもインターネット上で検索できるサービスが社会的に普及したことによると言う。それにより、マンション管理の質がそれらの価格に適正に反映される市場環境が整ったそうだ。それ以来、住人のマンション管理に対する意識も高まり、騒音トラブルやペットの問題といった居住者のマナーに起因するトラブルは激減したらしい。

これだけの行き届いた管理サービスの提供を受けながら、管理組合としては管理会社に全面委託をしていた頃よりも管理コストの削減が実現したそうだ。30年先までを見越した長期修繕計画でも、余裕のある資金計画が立っているとのこと。この長期修繕計画には、バリアフリー化やオール電化などのグレードアップのプランまで含まれており、住人に夢を与える内容となっている。

また、居住者から何か苦情があれば、その居住者が満足するまで管理員または管理者が対応を行い、管理者が再発防止策を取ってそれを居住者に報告するところまで徹底している。しかも、最後に必ず「他に何か気になることはございませんか?」と尋ねている。居住者が「ここまでやってくれるのか」と感動するサービスが実際に行われている。

詳しく聞くと、同じ志を持つマンション管理士が集まって事業体を作っていると言う。そこにマンション管理士の紹介依頼があり、この管理組合との契約に至ったとのこと。この事業体はマンション管理士の紹介後のフォローもしっかりしており、苦情受付窓口があるほか、後進の指導なども行っているらしい。また、定期的に紹介先の満足度の調査を行っており、その結果により得られる報酬に差が出るらしい。

この事業体について詳しく聞きたいと思ったところで、マンション内に突然火災報知器のベルが鳴り、びっくりして飛び起きた。火災報知器ではなく、目覚まし時計の音だった。

夢で見たマンション管理” に対して1件のコメントがあります。

  1. 天満 より:

    >まるでディズニーランドのカストーディアル(清掃員)を見ているようだ。

    これ、良いですね。
    管理業者関連=キャスト
    居住者=ゲスト

    制服も綺麗なデザインの物が良いな。

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