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2005/10/19

執筆者: naito (10:33 am)
管理組合の意識改革が進まない理由
管理会社社長による修繕積立金の使い込み事件が報道されている。川崎市の元管理会社長が、自分の会社の運転資金に使うため、東京、千葉、埼玉など関東地方の20以上の管理組合から総額2億円以上の修繕積立金を引き出して横領したらしい。

財産の分別管理を定めたマンション管理適正化法の施行後、4年も経過しているのに、いまだに上のような事件が発生するのは、管理組合の意識が高まっていない現実をよく表している。いかに適正化法で制度は作っても、マンション居住者の頭の切り替えができなければ、管理組合の体質は変わらないということだ。

マンションのスラム化や、管理会社の倒産、管理組合理事長による横領など、マンション管理に関する事件の報道は目にしても、自分のマンションでは大丈夫という思い込みがある。それは、学校などで問題を起して呼び出された親が「うちの子に限って、そんなことはない」と異口同音に唱えるのと似ている。

人間は自分にとって都合の良い情報は受け入れるが、都合の悪い情報には耳を閉ざすという習性がある。せっかく高いおカネを払って手に入れたマンションである。その未来が暗いなどとは考えたくもない。そもそも毎日深夜まで残業で今日の仕事をこなすのに精一杯のサラリーマンや、家事や子育てに追われる主婦に10年後のマンションの未来を思いやる精神的な余裕はないのが普通だろう。

仮に上のようなマスコミ報道を見て、ひとりの役員や区分所有者が自分の住むマンションの管理組合運営に問題意識を持ったとしても、なかなか実際の行動を起こすまでは至らない。自分ひとりではとても改革は無理だと思うし、今の管理組合の体制の中では、「正直者がバカを見る」からである。

何か言えば、「言いだしっぺ」として自分ひとりが課題に取り組まなければいけなくなるし、正論を吐いても誰からも理解が得られなければ、マンションの中で孤立する。疑問は感じていても、あえて指摘はせずに見て見ないフリをする。マンション全体で考えれば明らかにメリットのあることなのに、自分が受けるデメリットが優先してしまって、何も言えなくなるのだ。このとき、「仕事が忙しいから」というのが自分に対しての最大の言い訳になる。

たしかに不況によるリストラで人員は削られる一方で、仕事はいくらやっても追いつかない。毎日夜遅くまで残業で、土日の出勤することも当たり前になっている。そのような中で管理組合活動に時間を割けというのが土台無理な相談である。しかし、そもそも時間というのは自分で意識的に作るものだ。「時間がない」と訴える人間のほとんどは時間管理のへたな人間だが、仮にそうだとしても、本人に本当にやる気があるのなら、どんなに忙しい中でも時間は作り出せるものだ。日頃「時間がない」とか「仕事が忙しい」とか嘆いているのに、飲み会やゴルフの誘いには喜んで応じるようなケースがそれだ。

今までマンション管理が議論されるとき、標準管理規約の改正や、マンション管理士の活用、管理会社による重要事項説明、行政による情報提供など、制度面での改革に限られていた。最近話題となっている国土交通省による「マンションみらいネット」の構築や、横浜市による「マンション管理組合サポートセンター」の交流会も、従来の延長線上で制度面での整備を進めているに過ぎない。それらを利用するのは、現に意識の高いマンション管理組合だけであって、意識の低い管理組合は相変わらず取り残されたままである。

では、マンション管理組合の体質をどのように改善をしていけばいいのか?制度面だけの整備には限界があり、これからは運用面でのノウハウの整備を進めていく必要があるということである。ここでいくつかのヒントを挙げたい。

問題の顕在化
管理組合の意識改革を行うには、まず問題を顕在化させる必要がある。自分たちが抱える問題にまず気が付いてもらわないことには、そこから先に話が進まない。例えば、修繕積立金が十分に確保されていないケースが多いが、問題が見えていないだけに危機感を持てない。近隣マンションの中古物件のチラシがよく入るが、築10年近いのに修繕積立金を入居当初の6,000円から一度も値上げしていないマンションが大半である。近いうちに必要となる大規模修繕工事のために十分な資金が確保されているのか、お節介ながらいつも心配している。恐らくまともな長期修繕計画が作成されていないか、あったとしても管理規約と一緒にどこか目の触れないところにしまい込まれているのだろう。

マンション管理センターの「修繕積立金算出システム」では、モデルケースとして竣工後4年を経過した、9階建45戸のマンションの計算例が紹介されているが、行政として同様のサービスを無償で提供すべきだ。利用者が自らホームページ上でデータ入力できるようなシステムを構築すれば、運用コストは十分に税金でまかなえるだろう。モデルケースも小規模マンションから大規模マンションや超高層マンションに至るまで様々なケースを公開しておけば、利用者にとって一応の目安になる。

さらに、同じ計算方法による結果をマンション販売時の重要事項説明に加えるように義務付ける。こうすれば、十分な修繕積立金のある中古マンションとそうでない中古マンションの差別化にもなる。機械式駐車場の維持費が一切含まれていないような杜撰な長期修繕計画もあったりするが、重要事項説明義務違反になるのであれば、販売業者ももっと真面目に作るようになるはずだ。

リーダーの育成
区分所有者に問題意識を持ってもらえたら、その中からリーダーを最低1人育てる必要がある。このリーダーには、与えられた課題を解く能力ではなく、むしろ課題を見つけ出す能力が要求される。建物や設備の維持管理に加えて、ペイオフ対策、積立金運用、保険、滞納対策、IT化、バリアフリー、コミュニティー形成など、管理組合運営に高度な知識とスキルが要求される時代である。ゴミ出しのマナーやペット問題、上下階の騒音トラブルといった居住者間のトラブル対応にまで気を使う必要がある。

管理組合役員として1年間経験すれば一通りの管理組合運営を学習することはできるが、それだけでは足りない。毎年同じことをやっていればいいというわけではない。10年先、30年先、建替えを含めた長期的視野に立って、管理組合をリードしていける人材が必要となる。マンション管理士の資格を有する者は、マンション管理に関する最低限の知識は持っていると考えてよいが、単に資格を持っているだけではリーダーになるには不十分だ。それ以外の資質やスキルが必要になるからだ。

リーダーには常にアンテナを立てながら、情報をキャッチする能力が要求される。しかし、せっかく問題意識を持っても、なかなか行動には移せない。仕事が忙しいし、言いだしっぺで何かを始めると損をするのが目に見えているからだ。したがって、リーダーを後押しをしてあげる世話人のような存在が必要だ。世話人はリーダーと個別に密度の濃い話し合いをして、一緒に打開策を考えるたり、有益な情報を提供したりする。マンション管理士が世話人となっている横浜市マンション管理組合サポートセンターの交流会は、その理想に近いものだ。

この交流会にわざわざ参加する者は、それなりに意識の高い役員や区分所有者であり、リーダー候補となる。そして、交流会ではリーダー同士が深い議論ができる場を提供することが大切だ。時間の限られた交流会でそこまでの信頼関係を築けるか、深い議論ができるかどうかがポイントになる。世話人の腕の見せ所だろう。会合の後に飲み会や食事会を実施してインフォーマルな交流を深めるのも手だし、一泊二日くらいで語り合う場を設けるのもひとつのアイデアだ。

このリーダーには、それなりの資質も必要になる。命じられたから動くのではなく、自分がやりたいからやるという強いボランティア意識が必要だ。現状に対して強い問題意識と改革への思いを持っていることと、人に対する深い関心を持っていることも条件となる。このようなリーダーの中から、優れた実績を挙げた人々を行政として表彰する制度があっても面白いだろう。

責任者の明確化
このリーダーが管理組合の中で、他の役員や区分所有者の意識を高める重要な役割を果たすことになる。リーダー1人が頑張っても、後が続かない。役員全員に問題を認識してもらった後は、誰がその問題を解決するのか責任者を明確にする必要がある。理事長だけが決定権を持っていては、他の役員は何もしなくなる。逆に理事会全員で決めるということは、逆に言えば誰も責任を取らないということになる。何かをやることにしても、予定通りに進まない。問題が起きても誰もフォローしないという結果になる。責任者をはっきりさせて、その責任者の判断で決める。他人が決めたことをやるのは「やらされ感」が強くて疲れるが、自分が決めたことをやるときは、しっかりやるものだ。

現在の標準管理規約には理事長、副理事長、会計担当理事の役職しか規定されていないが、これに加えて、修繕担当理事、広報担当理事、総務担当理事くらいの役職は規定しておくべきだろう。役員の数が多ければ役職を増やしてもいいし、数が少なければ、理事長や副理事長が担当理事を兼任することがあってもいい。

役員報酬が無償の場合、どうしても「甘え」がでる。有償にすることで、それなりの責任感を感じてもらうことも必要だ。報酬額については、行政が積極的にその目安を公表すべきだろう。自主管理の場合や全部委託の場合について、モデルを示すのが良い。

そして、その期に出た問題やトラブルはその期の役員が解決するルールを理事会運営細則に明記する。次年度役員への申し送りは不可。複数年に亘る課題の場合は、委員会を設置して解決する仕組みが構築できるまで現役員は全員退任できない。そのような仕組みを作っても面白いだろう。

理事会を気軽に話し合える場にする
このリーダーが気を配るべきことは、理事会で役員全員が気軽に話し合えるようにすることである。理事会を形式的なものではなく、役員同士が深い議論をできるような場にする必要がある。

いくら問題を顕在化させても、責任者を明確にしても、互いの信頼関係がなければ、なかなか行動には移せない。自分の担当分野以外は無関心というのではダメで、全員が協力する体制を作る。それにはコミュニケーションの取り方が重要となる。他の人と直接向き合った話し合いの中で、徐々にみんなの意識を変えていくのだ。

しかし、初対面の役員同士では、なかなかホンネで話し合う場にはなりにくい。自己紹介に時間をかけて、言いたいことをすべて言ってもらった後に、ようやく腹を割って話し合うことができる状態になる。そこまで行かないと互いの信頼関係も生まれず、協力関係も成り立たない。

管理会社のフロントが理事会の議事進行を仕切るのはダメ。理事長だけがしゃべるのもダメ。「話し合い」の場ではなく、「聞き合い」の場と考えて、出席者全員の言いたいことをすべて聞く姿勢が大事だ。このような場を作るのはなかなか難しいものだが、もともとそういう場を作るのに長けた人材もいる。そのようなスキルを持たないリーダーは、リーダー同士の交流会での経験を通して、実践的にそのスキルを身に付けてもらうしかないだろう。

このような理事会では、データ化されていない情報が大事になる。実際に顔を突き合わせて話をしないと得られない情報もたくさんある。本気で耳を傾け、相手の思いを受け止める能力が要求される。間違っても、電子メールなどのITツールにばかり頼るあまりに、フェース・トゥ・フェースのやりとりが希薄になることは避けなければならない。

管理会社を味方にする
リーダーは管理会社とも良好な信頼関係を構築し、味方につける必要がある。世間の管理組合役員やマンション管理士の一部に「管理会社悪人説」のような考え方も見受けられるが、管理組合と管理会社は利害関係が相対するという考え方は、資本家と労働者の対立を唱えたマルクス主義のような前時代的な考え方である。管理会社に問題があるケースは、そもそもサービスの受け手である管理組合側が無知無関心であることに原因がある。管理会社はそれなりにノウハウを持っているし、フロント担当がマンション管理士の資格を保有しているケースも多い。それを活用しない手はない。サービスの受け手、すなわち市場がより高いサービスを提供する管理会社を選択する市場原理が進めば、粗悪な管理会社は淘汰されるか、品質を高める努力をせざるを得なくなる。それが管理組合と管理会社の本来あるべき関係である。

しかし、残念ながら管理組合の立場に立ち、長期的視野に立って管理組合をリードしていくまでのサービスを行っている管理会社はほとんどない。そもそも一人で十数件の物件を抱えているフロント担当者に、そこまでのキメの細かいサービスを要求することは無理な話である。長期的視野を持って管理組合の将来を考えるのはリーダーの役割であり、リーダーが管理会社からより良いサービスを引き出していく必要がある。

マンション管理士は良きメンターであれ
マンション管理士などの専門家の活用も有効だ。マンション管理士は、ある意味で管理組合が管理会社をうまく活用するために生まれたような存在であるが、現実にはそのマンション管理士の活躍の場は狭く、残念ながらあまり有効活用されていないのが実態である。しかし、管理組合のリーダーにとって、マンション管理士は良きアドバイザーであり良きメンターと成り得る。管理組合の意識改革を推進するリーダーが増えることが、マンション管理士の活躍の場を広げることになる。もちろんマンション管理士が管理者として就任して、実務面でリーダーを支える役割を負うことも大いに有り得るだろう。

いずれにしても、マンション管理組合の意識改革は、単に管理規約や理事会といった制度を整えただけでは進まない。改革を進めるためには、人と人との信頼関係による密なコミュニケーションが必要であり、それを推進する世話役的なリーダーの存在が必要不可欠である。管理組合の中からそのような人材を発掘・育成し、バックアップする体制の構築を行政に強く望みたい。
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投稿日時: 2005-10-19 16:30  更新日時: 2005-10-19 16:30
 kazz
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投稿日時: 2005-10-20 13:34  更新日時: 2005-10-20 13:34
 
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投稿日時: 2005-11-29 18:05  更新日時: 2005-11-29 18:05
 
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