真実の瞬間

スカンジナビア航空を再建させたヤン・カールセンの著書「真実の瞬間」を読みました。1981年にスカンジナビア航空の社長に就任した彼は、それまで製品本位だった企業を、顧客本位の企業に作り変えるために、階層的な管理組織を壊して、現場の従業員への権限委譲を大胆に進めていきます。この手法は、その後多くの企業でお手本となったようで、私がIBMに勤務していた1990年代、当時のガースナー会長のリーダーシップによって進められていた改革もまったく同じものでした。その後のIBMの復活ぶりは、ガースナー元会長の著書「巨象も踊る」で紹介されている通りです。

さて、ひるがえって、こちらは日本の携帯電話会社D社。先日、娘の使っている携帯電話の充電がうまくできなくなったので修理を依頼しました。購入後まだ1年経っていないので当然無償修理を期待していましたが、充電器と接続する部分の本体側のラッチが欠けており、「取扱い不良によるもの」とのことで保証対象外とのこと。場所的に考えて、落下や外部からの圧力で欠けるような部分ではないので、普通に充電器に出し入れをする際に欠けたものであること主張して無償修理を要求しましたが、本体と充電器を預けて2週間待たされて出てきたレポートが「2000回の脱着試験を行いましたが異常はありませんでした。したがって、お客様の取扱い不良によるものと判断します。」との、顧客現場から離れたメーカーの品質部門にありがちな、ありきたりの言い訳ばかり。逆に、どのような取扱い不良により、ラッチが欠損したのかについてはまったく触れられていないので、到底納得のできるレポート内容ではありませんでした。

あ、そうですか。分かりました。もうD社からは買いません。次から家族全員A社にします。ラッチの欠損という異常な不具合を、マニュアル通りに「取扱い不良」で片付けてしまったばかりに、D社は4人の顧客を失い、何かにつけて「だからD社はダメ」と言いふらされることになるのでした。ご愁傷さまです。