さおだけ屋はなぜ潰れないのか?

「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」という、興味を引くタイトルの本が売れているようです。私も衝動的にAmazonで購入。日常生活での身近な疑問をテーマに、難しい会計学の考え方を読みやすくまとめている本で、一気に読み終えることができました。上の疑問の答えが気になる方は実際に本を読んでいただくことにして、ここではマンション管理組合の会計の問題点について触れてみましょう。一般に管理組合の会計は、管理規約の規定により、一般会計と修繕積立金会計に分けて経理されています。そしてそれぞれについて、年度末の決算時に収支計算書と貸借対照表が作成されます。まともに区分経理されていないという管理組合も散見されますが、それらは論外としても、せっかくきちんとした収支計算書と貸借対照表が作成されていても、今の会計方法では十分に活用できるものになっていないと私は感じています。利益追求を目的とする企業の場合、損益計算書と貸借対照表がその企業の業績を最もよく示す指標となるのですが、管理組合の場合は収支計算書と貸借対照表を見ても、健全な管理組合運営がされているかどうかを十分には読み取れません。もちろん管理費等の滞納金額については、貸借対照表から読み取ることはできます。しかし、例えばその修繕積立金が将来に備えた十分な金額であるかどうかは、今の会計方法では貸借対照表から読み取ることはできないのです。そもそも修繕積立金会計は、共用部分の資産価値の維持が目的なのですから、本来は共用部分の経年劣化による資産価値低下分を修繕費引当金のような形で収支計算書に表すべきでしょう。これは別に難しいことではなくて、例えば向こう30年の長期修繕計画があれば、その修繕費用の総額を30で割った金額を1年当たりの修繕費引当金と考えることができます。修繕積立金会計の収支計算書と貸借対照表に、この共用部分の修繕費引当金累積額を載せるようにすれば、その資産価値の低下分に見合う修繕積立金がちゃんと積み立てられているかどうかが、一目で分かるようになるはずです。最近は、長期の低金利時代やペイオフの全面解禁を背景に、企業の損益計算書や貸借対照表に関心を持つ個人投資家の方も増えているようです。マンションの会計方法も、資産価値の維持が適正に行われているかどうかをより良く表すものに改善していけば、より多くの区分所有者がもっと管理組合運営に関心を示してくれるようになるのではないでしょうか。