専有部分と共用部分の区別

日経BP「マンション新時代」の「こだわりのマンション用語集」の「法律編(第2回)」で、専有部分と共用部分の定義が説明されています。この記事の筆者も指摘しているように、専有部分と共用部分の区別は本当に難しいです。区分所有法が定める「専有部分」とは、マンションの中で構造上・用途上独立した部分を言います。法律はあらゆる場合を想定して用語の定義を行うため漠然とした表現になっていますが、マンション標準管理規約では一般的なマンションを想定し、それを「住戸番号を付した住戸」、あるいは「店舗番号を付した店舗」と規定しています。そしてまず問題になるのが、専有部分と共用部分の境界線がどこにあるのかということ。区分所有法ではそこは明確に定義されていないため、戸境壁自体は共用部分で、その内装部分から専有部分とする「上塗り説」や、戸境壁の中心までを専有部分とする「壁芯説」などがありますが、マンション標準管理規約では「上塗り説」を取っており、「天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分」と定めています。また、玄関扉は錠と内装部分だけが専有部分で残りは共用部分、窓ガラスと窓枠は共用部分としています。さらに共用部分については「別表2」にリストアップされており、一通り明確に区別がされているように見えるのですが、問題はこの中の「属する」という表現。「別表2」では、共用部分が「専有部分に属さない建物の部分」とか、「専有部分に属さない建物の附属物」という表現で定義されているのですが、この「属する」というのは単に物理的にどこにあるかを意味しているのではなく、「どちらの付属物か」ということを意味しています。したがって、マンションの様々な設備をどちらの付属物と考えるかによって、それが専有部分になるのか、共用部分になるのか、判断が分かれてしまうことになります。例えば、玄関の外側に置かれている玄関灯とインターホンは専有部分でしょうか?共用部分でしょうか?玄関灯とインターホンは各戸の専用に供されているものであり、その電力も各戸から供給されていますから専有部分の付属物と考えることができます。しかし、それらが設置されている場所は共用部分であり、外観上の統一性を考えると玄関扉の外側部分と同様に共用部分とすべきかもしれません。また、各住戸内にある消防設備の熱感知器は専有部分でしょうか?共用部分でしょうか?この熱感知器については、建物全体の利用・保安・管理のための設備の一部と考えて、専有部分内に設置されていても共用部分とすべきかもしれません。しかし、そうなると熱感知器が接続された各住戸内の非常通報装置も共用部分ということになり、その非常通報装置がガス漏れ感知やオートロックのインターホンも兼ねていたりすると、いったいどこに境界線を引けばいいのか、分からなくなってしまいますね。私は基本的に設置場所を重視して、室外の玄関灯とインターホンは共用部分、室内の熱感知器や非常通報装置は専有部分と考えればよいと思っています。ただし、共用部分のメーターボックス内に設置された戸別の給湯器は専有部分の付属設備(ベランダに設置されたエアコンの室外機と同じ)という例外もありますので、ご注意ください。