大規模修繕は普通決議で可能か?

日経BP「マンション新時代」の「規則・細則を整える」の「(3)管理規約改正は、ここがポイント)」で、区分所有法には「規約で別段の定めができる」とされている条文があることが紹介されています。区分所有法の条文の中には、必ず従わなければいけないという「強行規定」と、管理規約で別の規定を設ければ、それに従えばよいという「任意規定」の2種類がありますので、その違いをよく見極めながら管理規約を定めていく必要がありますね。

さて、2003年6月に施行された改正区分所有法で大きなポイントのひとつとなったのが、共用部分の変更に関する決議要件。旧法では、「共用部分の変更(改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議(=特別決議:筆者注)で決する。」とされていた第17条の条文が、「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。」と変更されたのです。その次の第18条では、「共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議(=普通決議:筆者注)で決する。」とありますので、すなわち、形状や効用の著しい変更を伴わない大規模修繕工事については、仮に多額の費用が発生する場合でも普通決議で実施が可能になったわけです。

ところが、第18条第2項で、「前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。」とあるので、話はちょっとややこしくなってきます。ほとんどのマンションが旧区分所有法の第17条の条文をそのまま引用する形で管理規約を定めているため、多額の費用が発生する大規模修繕工事については特別決議が必要という「規約で別段の定め」があることになり、特別決議によって規約を改正しない限りは、普通決議で大規模修繕工事を行うことが出来ないというおかしなことになってしまうわけです。しかし、上のケースでは、規約の条文は区分所有法の規定をそのまま引用しただけの「確認規定」ですので、区分所有法の改正に合せて規約の規定は無効になるという解釈が成り立ちます。したがって、わざわざ規約の改正をしなくても、区分所有法の定めに従って、普通決議で大規模修繕が可能になると考えて構わないようです。

問題なのは、区分所有法改正後に竣工したマンションなのに、古い標準管理規約に基づいた原始規約を持つケース。販売会社の怠慢か、あるいは管理会社の怠慢か、意外とこういうマンションが多いんですよね。この場合は、区分所有法の規定をそのまま引用した「確認規定」ではなく、「規約で別段の定め」をしたものと解釈され兼ねないので注意が必要です。10?15年後の大規模修繕の時期を迎えてから慌てないように、今のうちに新しい区分所有法に基づいた規約改正を検討されることをお勧めします。