フランス・ドイツの区分所有建物事情

神奈川マンション研究会の平成14年度第6回勉強会に出席してきました。今回のテーマは弁護士の石川惠美子氏・河住志保氏による「フランス・ドイツの区分所有建物事情」。今年4月に視察に行かれたときの現地の写真をパソコンにつないだプロジェクターで映しながら、石川氏がドイツの区分所有建物、河住氏がフランスの区分所有建物について紹介をしました。石川氏によると、ドイツの区分所有者はほとんど管理会社任せ。管理会社が任期5年の管理者となり、そのまま再任を繰り返しているケースが大半で、管理会社は大変儲かる良い商売だそうです。区分所有者は基本的に「自分の所だけ良ければ」という考え方のため、マンション管理にはあまり関心がないようです。建物に関しては、部屋の向きや日当たりはあまり気にしない半面、むしろ冬の寒さをどう凌ぐかに一番関心があり、既存建物への外断熱工事なども積極的に行われているとのこと。そもそも建替えという概念はまったく無いようで、旧東独内の質の悪い建物でも、改修工事にかなりの費用をかけて質を向上させることが行われているようです。ペットは原則OK。どの集合住宅でも大型犬が普通に出入りしているそうです。逆に「何で日本では集合住宅でペットを飼ってはいけないのか?」と不思議がられたとか。狩猟民族と農耕民族の違い、家の中で靴を履いたままか脱ぐかという文化の違い、そのあたりがペットに対する考え方の違いとなって現れているようです。一方、フランスでは職業的管理者が任期3年の管理者になるそうですが、管理者を監督する立場にある理事会の力が強く、実際には総会によって解任され毎年変わることが多いそうです。ドイツと対照的にフランスの管理者は不安定であまり儲からない商売のようです。興味深かったのは、フランスの区分所有建物では、共用設備の維持管理費は共有持分にその設備を利用する割合に応じた係数を掛けて計算をするということ。例えばエレベータについては階数によって係数を変え、暖房費用については部屋の容積によって係数を変えるそうです。同じようなことが階段や駐車場等についても細かく定められているとのこと。さらに日常管理と大規模修繕では議決権割合が変わってくるそうで、総会運営は大変なようです。また、建物の1階と最上階で同じ規約は無効という判例があったり、ペットを禁止する規約は作ってはいけないという法律があるなど、日本とはだいぶ考え方が異なるようです。ローマ時代から区分所有建物が存在したヨーロッパに比べれば、日本のマンションはまだまだ歴史が浅く、試行錯誤している段階でしょうか。諸外国に学ぶべき点も多いように感じました。