居住者がベランダでカラスに襲われた場合の対応

神奈川県マンション管理士会の広報委員会に出席しました。今回のケーススタディは、居住者から「ベランダでカラスに襲われた」との連絡が管理会社にあった事例の紹介。管理組合としてどのように対応すべきかを中心に討論を行いました。

この事例は、横浜市内の賃貸マンションで、マンションの裏山にカラスが営巣。5月に繁殖期を迎えて気性の荒くなったカラスが、マンション1階のベランダに飛来し、そこにいた居住者の頭部をめがけて襲いかかったというもの。その居住者から管理会社に電話で「ベランダでカラスに襲われた」との連絡があり、管理会社は居住者に調査報告を約束。すぐに区役所に問い合わせたところ、担当者が後日実態調査に来ることになったので、当日中に居住者にその旨を連絡したとのことです。

後日区役所の担当者が現地を調査した結果、問題を認識し、区役所から裏山の管理者に連絡を取って巣撤去を提案することに。管理会社は居住者にその調査結果を連絡。その後、裏山の管理者の費用負担により巣の撤去がされ、事態は無事解決したとのことです。

引き続き行われた討論では、まずカラス対策が管理会社(管理組合)の業務かどうかについて意見が分かれました。すなわち、良好な居住環境の確保という意味で管理組合業務であるという意見と、本来は管理組合業務ではなく、個人が対処すべき問題だが、業務外のサービスとして対応すべきという意見です。ただし、いずれも居住者からの訴えを無視したり拒絶すべきではなく、管理組合(管理会社)として対応すべき問題であることについては意見の一致を見ました。

上のケースの場合、裏山の管理者の費用負担により巣の撤去がなされましたが、もし裏山の管理者が巣の撤去に応じなかった場合に、管理組合(管理会社)としてどのように対応すべきかについても討論を行いました。この場合は、管理組合の費用負担により巣の撤去を行うことを条件に、裏山の管理者の同意を取り付け、理事会決議または総会決議を経て巣の撤去を行うことで意見が一致しました。また、このようなカラス対策はマンション管理組合よりは、本来その地域の自治会が対応すべき問題であるという指摘もありましたが、緊急性を要するため管理組合が初期対応することは間違いではないとの結論に達しました。

なお横浜市の場合、カラスの巣除去費に半額程度の補助が出る制度があります。もし、このような問題に遭遇された場合、ご自分のマンションの市町村に同様の補助制度があるかどうかを確認されるとよいでしょう。

また、いかに迷惑なカラスでも鳥獣保護法の対象となる鳥獣です。巣の除去の際に、巣の中に卵やヒナがいない場合は、樹木の管理者の了承があれば法規上の許可は必要なく巣の撤去の実施が可能ですが、もし、巣の中に卵やヒナがいた場合は、鳥獣の捕獲許可が必要になりますので、ご注意ください。いずれにしても、市町村の環境保全課と相談して対策を進めることをお勧めします。