メールアドレスを持たない役員を役員MLに加える方法

管理組合役員の多くはサラリーマンや自営業者で、毎日仕事に追われている。職種も休日まちまちで、生活時間も異なるため、おのずとコミュニケーションが疎遠になりがちである。しかし、管理組合活動を円滑に推進していくためには、役員同士の密なコミュニケーションが欠かせない。幸いインターネットの普及により、時間を気にせずに電子メールでの連絡が簡単にとれるようになった。理事会の議案も事前に配布しておけば、会議の場の思いつきで議論や判断したりすることもなくなるので、時間の節約にもなるし間違った判断をするリスクも軽減できる。役員の間の日常のコミュニケーションにはぜひとも電子メールを活用すべきだろう。

特にメーリングリスト(ML)を利用すれば、すべての役員のメールアドレスをいちいち宛先やCCに入力したり、アドレス帳に登録したりする手間も省けるし、便利だ。MLには、FreeMLYahoo! Grouposのような無料のサービスも数多くあるが、メンバー全員がユーザー登録をしなければいけなかったり、不必要なメールマガジンが届くようになったり、無料であるがゆえのデメリットもあるので、できれば有料のサービスを利用したい。レンタルサーバーを利用するのもひとつの手だ。例えばハッスルサーバーは、初期費用1,000円、年間2,500円(税込)でディスク容量500MBが利用でき、MLも無制限で作成できる。

ただし忘れてはならないのは、メールアドレスを持たない役員の存在だ。
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実際、内閣府経済社会総合研究所の統計調査サイトによると、今年3月でパソコンの世帯別普及率は約65%に達しており、この2?3年は頭打ちになっている。これだけインターネットが普及したとは言え、3分の1もの世帯はまだパソコンを持たないということだ。パソコンを持っていてもインターネットを利用していない世帯もあることから、インターネットの利用環境にない世帯はもっと多いことになる。メールによるコミュニケーションは有益だが、メールアドレスを持たない役員は「蚊帳の外」に置かれてしまうことになる。このようなことは絶対に避けなければならない。メールをその都度プリントアウトして渡すという方法もあるが、他の役員にとって大変な時間と労力がかかることになる。管理組合でパソコンを購入またはレンタルして、メールアドレスを持たない役員に使ってもらうという方法もあるが、特に高齢者の役員の場合、パソコンの操作そのものに抵抗を感じる場合も多いので、それを強いるわけにもいかない。

そこでお勧めしたいのが、パソコンから送信した電子メールを送信先のFAXから出力し、逆にFAXから送信した書類を電子メールの添付文書として送信先に送ることのできるサービスだ。いくつかの業者が存在するが、例えばNTTコミュニケーションズの「インターネットFAX (iFAX)」では、平日昼間で1枚25円、夜間土日休日で1枚19円で利用できる(税別)。基本料金はかからない。添付ファイルも、テキストファイルやJPEG画像、Word文書であればFAXに送信される(ただし、Word文書はページ設定で「文字数と行数を指定する」を選択しておく必要がある)。FAXに送信可能なのは、32ページまでという制限があるが、通常のメーリングリスト上のやりとりであれば特に問題はないだろう。

iFAXを利用するには、管理組合で電話を持っている場合、その電話番号でNTTコミュニケーションズと契約を行うだけでよい。電子メールを送るときは、送信先のFAX番号を含む特定のアドレスを宛先に指定すればよい。ただし、宛先にこれ以外のものが含まれているとFAXへの送信が拒否されるので、注意が必要だ。これを防ぐには、宛先にはMLのアドレスだけを記述し、それ以外のアドレスを併記しないというルールをメンバー全員が守る必要がある。

また、電子メールをFAX宛に送信する場合には、ユーザー認証のため、メール本文の1行目にユーザーID、2行目にパスワードを記述しないといけない。メーリングリストに投稿するとき、メール本文の先頭にいちいちユーザーIDとパスワードを記述するのは多少手間になるが、メール全体をプリントアウトして渡す手間を考えれば、はるかに楽だろう。

逆にFAXから電子メールとして送信するには、ユーザー毎に割り当てられた特定のFAX番号に送信すればよい。このとき「着信課金機能」という有料オプションを利用するのがオススメだ。月額200円で、初期費用として基本工事費1,000円と交換機等工事費700円(すべて税別)がかかるが、発信元のすべての電話番号でiFAXの契約をする必要がなくなる。また、フリーダイヤルのように、iFAXの契約を行っている電話番号(管理組合の電話番号)に課金されるため、FAXの発信元では料金を負担する必要もない。このとき、電子メールの送信先は1箇所しか登録できないが、MLのアドレスを登録しておけば、役員全員に配信されるので問題はない。

ただし、パソコンもFAXも持たない役員がいる場合もある。その場合は、さすがにお手上げだが、もし管理員室にFAXがあればそこに送信して、管理員に集合ポストに入れてもらうのもひとつの手かもしれない。

IT(情報技術)の発達で、世の中は大変便利になった。そのメリットを管理組合活動の活性化にも利用しない手はない。しかしその一方で、情報格差によって貧富の差が生じる「デジタルデバイド」も大きな社会問題となりつつある。パソコンやインターネットを使えない人々の存在に配慮をしながらも、ITを有効活用していく工夫が、管理組合にも求められていると言えるだろう。