マンションの騒音問題について

マンションの騒音問題は、ペット、駐車場と並び、「3大トラブル」と称されています。特に、生活騒音の状況についての調査結果では、「跳びはねる音・物を落とす音」に対して、特に多くの人が不快に感じているそうです。団地の上下階の住人によるピアノの騒音トラブルが原因で殺人事件に発展したケースは特殊事例としても、集合住宅の中で騒音トラブルに悩む住人は結構多いものです。上階の深夜の騒音にまともに眠れず健康を害してしまう下階の住人、逆に下階の住人からの抗議に怯え、息をひそめて暮らしている上階の住人、上下階の住人同士が裁判で争うケースや、せっかく購入したマンションを騒音トラブルで手放した人も数多く存在します。今も多くの被害者または加害者が悩みを抱えながら、苦痛な日常生活を強いられているという悲しい現実があります。
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騒音の種類と遮音性能
音には、跳びはねる音や物を落とす音のように床や壁などを通して伝わる「固体音」と、ペットの鳴き声や楽器の音のように空気中を伝わってくる「空気音」の2種類があります。「固体音」の中で、特に床に直接衝撃が加わって階下に伝わる音を「床衝撃音」といい、床にスプーンを落とした時などに発生する「軽量床衝撃音」と子供が跳びはねた時や扉の開閉の時などに発生する「重量床衝撃音」の2つに分類されます。

日本建築学会が定めた床衝撃音遮音性能(L値=小さいほど良い)によると、上下階の遮音性能は、軽量衝撃音でL-45(いすや履物を引きずる音が聞こえることがある程度)、重量衝撃音でL-50(足音は聞こえるがあまり気にならない程度)が好ましいとされており、L-55(使用者からの苦情や遮音性能上の支障が生ずることがあるがほぼ満足しうる)が通常生活できる音とされています。また、空気音遮音性能(D値=大きいほど良い)については、D-50(ピアノなどの音が小さく聞こえる程度)が好ましいとされています。ただし、一般にマンションの広告パンフレットに載せられているL値は、軽量衝撃音のL値だけで、重量衝撃音のL値は表示されていないので注意が必要です。実際の生活の中で気になる騒音は、むしろ重量衝撃音であるからです。

目安としては、床のスラブ厚が20cm以上で重量衝撃音L-50程度、戸境壁のコンクリート厚が18cmでD-50程度の性能があるそうです。当マンションの床スラブ厚は20cm?24cm、隣接住戸との戸境壁は16cm、フローリング材はL-40等級と比較的良好な遮音性能を持つ構造となっていますが、子どもが跳びはねても大丈夫と言う性能ではありません。そのことをまず理解しておく必要があります。

フローリング工事の際の注意点
部屋のリフォームを行う際にも注意が必要です。特にカーペット敷きのフロアをフローリングに変更した後に、騒音トラブルになるケースが数多くあります。このため、規約や細則でフローリングの遮音性能を定めたり、階下の住人の同意を得るなどのルールを定めたりしているマンションも多くなってきました。当マンションの規約でも、専有住戸のリフォームをする際には理事会の決議により理事長の承認が必要となっていますので、ご注意ください。細則の定めはありませんが、理事会の運用上、フローリング工事については、竣工時のフローリング仕様(L-40)と同等の遮音性能を持つことと、階下の住人に工事前にあいさつをすることを条件にしています。リフォームを計画されている方は、必ず管理組合役員または管理員までご一報ください。

居住者のマナー
どんなに遮音性能が良くても、マンションの中では生活騒音は必ず聞こえるものです。騒音トラブルは、自分が被害者になっても加害者になっても辛いもの。問題が起きないようにするには、住人がマナーを守ることがまず基本です。騒音で迷惑をかけないための工夫としては、イスの脚にフェルトを取り付けたり、フェルト底のスリッパを使ったり、厚手のじゅうたんを敷くことで音を軽減させる方法などがあります。小さなお子さんの跳びはねる音はなかなか防げませんが、お子さんにも周囲のお宅へ配慮するようにマナーを教えることが必要です。自分では気にならない音も、周囲の人は迷惑だと感じているかもしれない―。こうした気配りを常に忘れないようにしましょう。

良好なコミュニティー形成
音には顔があると言われます。親しい人の出す音は気にならなくても、知らない人の出す音は気になるものです。4月29日(木)放送のNHKテレビ「難問解決!ご近所の底力」では、バスツアーで騒音を体験できる技術センターをみんなで訪問し、騒音がいかにうるさいかを学びながらお互いに仲良くなり、その結果、相手の暮らしぶりが分かれば、マンションで音がしても気にならなくなるという妙案で騒音トラブルを解決したマンションが紹介されていました。

ペット、騒音等、多くのマンション問題は、隣人の顔も名前も分からないような未熟なコミュニティーに根本的な原因があります。マンションは鍵ひとつでセキュリティとプライバシーが確保され、煩わしい近所づきあいも不要という誤解をしていると、ともすれば「自分さえ良ければ」という考えに陥りがちですが、集合住宅で本当に快適な暮らしを求めるのであれば、マンションの住人全員が同じ建物に住む仲間同士という意識を持つことが実は一番大切なことなのです。結局のところ、住人ひとりひとりが騒音問題に対する理解を深めると同時に、日頃から住人同士が交流を持ち、良好なコミュニティーを形成することが一番有効な対策と言えるようです。