うっかりした管理組合にはうっかりしたフロントが来る

新宿で行われた「東京マンション管理実務の集い」の実務勉強会に参加しました。出席者は14名で、今回のテーマは「リゾートマンション勉強会」。スラム化したマンションの実態調査や管理組合の活性化など、マンション問題について幅広く研究をされている某教授をお招きして、約3時間お話を伺いました。今回は特にレジメの用意はなく、テーマと関係なく、マンションに関する様々な話題に話が及びました。まず、出席者からの質問に応じてマンション管理士が業として成り立つかどうかの話から入り、昔は建築士にすべて任せていた病院やホテルの内装のデザインを、最近では専門のインテリアコーディネーターに依頼することが常識になってきたことを引き合いに、今は管理会社にすべて任せてしまっている管理組合の運営補助業務も、専門のマンション管理士に依頼することが常識になるという展望を語っておられました。もちろん、そのためには管理組合の方々にマンション管理士に依頼することのメリットを理解してもらわないといけません。次に、管理組合の活性化については、「管理組合がしっかりしていると管理会社もしっかりする。管理組合がうっかりしていると管理会社からもうっかりしたフロントが来る。」と訴え、どの管理会社が良いとか悪いとかいう話ではなく、どの管理会社に委託するにしても、管理組合自体が主体的に活動しないとダメであることを説きました。また大規模修繕工事の入札の際に、たとえ専門のコンサルに依頼しても、施工業者によって工事項目・仕様がまちまちであるのに見積価格だけを単純比較していた事例があることを紹介し、建物の診断をする人と施工する人は別でなければばらないことと、コンサルの能力にもバラツキがあることを警告しました。また、話は防災のことにも及び、各住戸のメーターボックスには結構スペースがあるので、非常用の水を入れたポリタンクを1個づつ配布して、置いてもらうというアイデアを披露。また平成10年度の調査による県別の分譲マンションの戸数のデータを示して、上位10県で全体の80%の戸数があることを説明しました。例の「80:20のパレートの法則」ですね。この上位10県ではマンション問題を行政が問題として捉えているものの、下位20県では行政が対応する環境が整っておらず、問題が深刻であるそうです。ちなみに全世帯の中で分譲マンションの割合が一番多いのが神奈川県で13.72%。東京都は分譲マンションの戸数では1位ですが、賃貸マンションが多いため、全体の割合で言うと12.65%で2位だそうです。スラム化については、「マンションの経済的陥没」に原因があるとして、マンションの価格低下により経済的に余裕のない購入者が増え、それが管理費等の滞納の原因となり、どんどんマンション価格が下がっていくという悪循環の構図を示しました。関東某県では何の歯止めもなく、市街化調整区域内の既存宅地に相次いでマンションが建設されているそうで、駅前の商業地域から人が消え、それがスラム化に拍車をかけているとのこと。特に、維持管理の良いマンションも悪いマンションも同じ価格であり、評価されるのは築年数だけで、実際の現場を見ないで売っている不動産業界に問題があるとしました。また、郊外の団地型マンションでは「フィルタレーションの問題」が発生しているとのこと。スラム化していくマンションから逃げることができるのは金持ちだけで、貧困層や高齢者だけが残るという意味だそうです。当初4,000万円で購入した人と、最近500万円で購入した人が一緒だと、修繕積立金値上げの合意形成も困難。そもそも、金を払えない人はマンションには住んではいけない。しかし、追い出しても住むところがないところが日本の住宅政策の問題とのこと。英国ではリバースモーゲージ制度により、いつでも自分の持ち家を手放して公営住宅に移れるそうです。日本のマンションが抱える様々な問題を改めて考えさせられる勉強会でした。