マンション管理士任意講習の第1日目
マンション管理センターの主催により、明治学院大学白金キャンパスで行われたマンション管理士任意講習の第1日目に出席しました。午前中はマンション管理センター常務理事の高橋氏による「マンション管理センターの業務」と、弁護士の佐原專二氏による「管理費等の未収金回収実務について」。高橋氏によると、平成13年度試験の合格者7,213名のうち6,998名がマンション管理士登録をしているのに対して、平成14年度試験の合格者3,719名のうち登録したのは776名にとどまっているそうです。神奈川県マンション管理士会に所属する1期生と2期生の割合がおよそ7:3で、ほぼ合格者数に比例していることから考えると、初年度の登録者の中には、マンション管理士としての活動をまったくしていない方が多いということになりそうです。佐原氏は、法人と個人の区分所有者に管理費の格差を設けたことが無効とされた判例や、売れ残り住戸の管理費について分譲業者に支払い義務を認めた判例と認めなかった判例、時効に関する判例とその対応策、滞納督促の具体的方法、支払督促・少額訴訟・通常訴訟の長所・短所などを紹介し、督促防止対策として、督促のルール・スケジュールを決めておいたり、高率な遅延損害金や裁判費用、駐車場使用契約を解除できる定めを管理規約に置くことを勧めました。午後は弁護士の折田泰宏氏による「改正区分所有法について」と弁護士の篠原みち子氏による「改正標準管理契約書について」。折田氏は、今回改正された、(1)共用部分の変更、(2)管理者等の権限の拡充、(3)規約の適正化、(4)議決権行使、規約・議事録等の電子化、(5)法人化要件の緩和、(6)復旧決議がされた場合の買取請求権行使の期間制限等、(7)建替え決議要件の緩和、(8)建替え決議の手続きの整備、(9)団地内の建替え手続きの整備、の各点について、境界確認の代理権や、住戸が転売された後の売買契約の瑕疵担保責任の代理権など、今回の改正で取り残された課題を交えながら紹介しました。篠原氏は、今回の標準管理委託契約書の改正の背景には、マンション法の整備や消費者保護の考え方などの社会情勢の変化があるとした上で、自動更新条項の削除や、分別管理と収納方式の規定、守秘義務、図書の保管の規定、委託業務費の内訳明記などのポイントを説明しました。特にマンション住人は、自分たちのマンションにどんな特徴があり、何を望んでいるのか整理できてないことが多いとし、「マンション管理士はそれを浮き出させる形でアドバイスしてほしい」と訴え、さらに、「この標準管理規約はあくまでも量的なことを定めたものであって、それ以上に大切なものは質の良さ。それを標準契約書に表すことをいろいろ考えたが実現できなかった。安いだけでなく、質が良いかどうかをアドバイスできるようになること。管理会社も質の良さをアピールできることが大事」と結んでいました。管理委託契約書はいわば楽譜みたいなもの。その曲を生かすも殺すも、それを演奏するオーケストラ(管理会社)と指揮者(管理組合)の腕次第。両者の呼吸がぴたりと合って、初めて質の高い演奏が可能になるのだと思います。そして何よりも聴衆(住人)の意識の高さが、優れた演奏を引き出す最大の要因であると言っても過言ではないでしょう。