ワンルームマンションと原野商法

住宅新報Housing TIMESの2002/09/27付ニュースで、渋谷区がワンルームマンション建築の事前協議を条例化することが紹介されています。近隣とのトラブルを防止するために、ワンルームマンションを建設する際には区との事前協議を義務付けるそうです。ワンルームマンションやリゾートマンションでは多くの区分所有者が不在であることから、管理会社が管理組合の管理者になるケースも多いようですが、この場合管理会社が管理業務の委託者と受託者を兼ねることになるので、ずさんな管理になることも多いようです。このようなマンションでは事実上管理組合が機能していないことから、将来老朽化が進んだときの修繕工事等の対策も十分な検討がなされていないのが現実のようです。実際、知人のマンション管理士のところにも、このようなワンルームマンションの区分所有者からの相談案件が増えているとのこと。区分所有者の多くが逃げ出した結果、廃墟となっているリゾートマンションの話もよく聞きますし、特にペイオフ対策や節税対策を目的にワンルームマンションを購入された方が、将来の少子化、人口減少、都内のオフィスビルの居住用マンション転用等による賃貸マンションの需要減少の問題や、建物の老朽化による多額の修繕費負担に直面したときに、大きな社会問題となる可能性を秘めているように思えてなりません。特にこのようなマンションでは権利関係が複雑になっている例も多いようですので、「原野商法」による被害者救済の問題を連想してしまいます。私のような自己居住用マンションの管理組合役員出身のボランティア管理士としては、ワンルームマンションやリゾートマンションでの案件を扱うことには正直なところちょっと抵抗がありますが、このようなマンションがスラム化することは単なる投資の問題というだけでなく、周辺の住環境の低下にもつながり、社会的にも深刻な問題となる可能性を考えると決して看過できるものではないように感じます。区との事前協議では目先の近隣とのトラブルだけでなく、ぜひこのような将来の問題についても十分に話し合っていただきたいと思います。